皆様、お元気ですか? やっと過ごしやすい爽やかな季節になりましたね。
あけの会では、今月、大きな御奉納を控えておりまして、
会員一同、少し緊張気味で、お稽古に励んでおります。
さて、今月は6日に中秋の名月ですね。
中秋の名月とは旧暦8月15日のことで、一年で最も空気が澄み切った、
美しい月が見られるといわれている日なのです。
ただし「満月」というわけではなく、実際の満月はその翌日の7日となります。
いつも私たちを夜になると優しく照らしてくれる月―太陽の反射でありながら、
直射の強さをやわらげ、人の胸にそっと寄り添い、染み込んでいきます。
中秋の名月の夜には、お芋(里芋やさつまいも)やお団子を供える、
「芋名月」の習わしがあります。
それは収穫への感謝であり、神様と人が共になって時を過ごす、
うるわしき夜でもあります。
お団子は、お月様の象徴でもあるので、まん丸につくります。
本当は、野球ボールぐらい大きくて(笑)、
数も15個(十五夜にちなんで)あったのだとか。
しかもそれは、盗んでもオッケーで、むしろ盗まれると縁起がよいなどといわれ、
かつて子どもたちは競って、お団子を持っていったのだそうですよ。
また、隣に沿えるススキは、黄金色に染まるイネの見立てで、豊穣を意味します。
お月様にお団子にススキ、そしての月を、共に見上げながら宴を楽しむ人々―
中秋の名月には、ぜひ、月夜を見上げ、
素敵なひとときを過ごされてくださいね。
また、ご一緒に、江戸時代流行っていた風雅な遊び―「虫聞き」も、
楽しまれてみてください。
この遊びは、日本人…いえ、日本語人の脳の処理様式(左脳で聴いて左脳の、
言語野で処理する原始的!な脳)だからこそ感じ取ることが出来る遊びです。
虫の音も、自然音も、動物の鳴き声も皆、「音」ではなく「声」として
聞えてしまう私たちは、自然界の気配を代弁し、自然界の声なき声たちのものたちの、
代弁者を務めることのできる、稀有な能力を「たまたま」授かって、
この世界の住人となっています。
この「たまたま」という魂と魂の出逢いを味わいながら、
時を重ねていってほしいなと思います。
さて、この秋の雅楽をご紹介します。
雅楽の音色も自然の模倣がもととなっています。
悠久の時を超えて、いにしえの人々が、楽の音を通して、
いかにして自然に向かい合い、溶け合っていく感性で過ごされていたのか、
そんな視点も持ちながら聞かれると、また面白い発見があるかと思います。
「長保楽急」(宮内庁式楽部の録音テープより)
このテンポは、やはり人を相手にするというよりも、
「自然」のほうに働きかけているとしか思えないのですね。
せっかくなので舞楽の方ももう一つご紹介します。
「納曾利」
二人舞で演じられる納曾利(なそり)が新鮮でカッコいい!です。
私のほうは、この秋、中秋の名月にちなんだ「観月会」にて、
月夜の下の雅楽を楽しんで参ります。
「いとおかし」と「もののあはれ」、そして顕幽が交錯する世界の中で、
何を感じるのか、興味深い夜でもあります。
それでは今日はこの辺で。
どうぞ良き秋をお過ごしくださいませ。